とにかくアーティスト関連の事件が多かった12月と1月である。ジャマイカで有名人でいるということは、想像以上にハードなことなんだろう。
殺人事件の重要参考人として連行されたヴァイブス・カーテルは、数日後に釈放された。事件の詳細は何も明らかにされておらず、カーテルと事件の関係も未発表のままである。ヴァイブス・カーテルのバースデイバッシュは、本人が拘留されたため延期されたが、ついに1月下旬、ラルースにてビッグダンス。ボウンティ・キラー、シズラとカーテルが同時にステージ上でマイクを握るという、See Mi A Seh。こんなの見たい、て声が聞こえるよ。
レベルサルートは今年もビッグに。ルーツの大御所からダンスホールの重鎮と有り難いステージがつづく。ジュニア・ヴァイルスの出演が話題をよんだ。ルーツ・レゲエのショーとはいっても、大御所シンガーよりもファイアー系DJが島ではウケる。島で人気のファイアー系ダブポエット、DYCRが火をつけて、「Love So Nice」からファイアーDJに転身したジュニア・ケリーが燃やし、チャック・フェンダー、リッチー・スパイス、フリスコ・キッド(a.k.a. アンシエント・モナーキー)と火は燃え続け、ファイアーマン、ケイプルトンが急に出たと思ったらステージはボボで埋め尽くされ、シズラも同時に出て、わさわさパサパサ状態になってしまった。どうも、あとの出番を嫌がったケイプルトンが、本来の出番前に出てしまったらしい。ケイプルトンとシズラは、年末セントトーマスでのイーストフェストのステージで、バッドワードを使った罪に問われ、裁判を控えている。
ステージショーでもダンスでも、DJが動くところ取り巻きも動く。ラスタ系DJはとかく取り巻きが多い。MCが取り巻きをステージから降ろし、シズラの独断ステージでヴァイブスも下がることなくStill Blazing、最後はルシアノが締めた。
年末の「スティング」では、会場に出向いていながら出演しなかったボウンティ・キラー。その後テレビのインタビューで、「プロモーターと、トリだったら出ないという条件だ」と言及。スティングのトリは、わさわさパサパサになりやすいと懸念してのことだろうが、最近のアーティストは、トリをいやがる傾向にあるらしい。
一昔前のビッグなショーでは、アーティストも観客もトリのステージを楽しんだもんだ。「サンスプラッシュ」などでは、デニス・ブラウンは朝がきてからステージに出ると相場が決まっていた。朝がくれば日が照って急に暑くなる。サンスプ・ベッド(ただの段ボール)の代わりに、日よけの帽子が「デニス・ブラウン・ハット」と称して売り出される時間帯だ。
1月中旬、ビーニ・マンがキングストンの郊外で愛車ハマーを運転中に交通事故。以前から巷の話題だったビーニの愛車、黒のハマー。あのハマーが数回横転して潰れ、DJは重体で病院に担がれた。島中でこの国民的アイドルの無事を祈り、病院に関係者やファンが集まった。
年末の「スティング」、アームスハウスなショーの中、自分のステージを全うしてDJ株を上げたドクターである。年末年始はGTテイラーのショー、「ユニティ・スプラッシュ」、ココ・ティーのショー、「イーストフェスト」などとほとんどのショーに出演、トリをつとめ、好感度もかなりアップ。2週間の入院生活ののち、ドクター・ビーニ・マン、記者会見をして退院。"Beenie Man Got A Proper Fix" ってわけ。記者会見では、すでに新しいハマーをオーダーしたと発表。当初ステージのカムバックには5ヶ月かかると言われたが、きっとすぐに、ドクターの元気なステージが見られるよ。
毎年有名な外国人アーティストが出演する「エアジャマイカ・ジャズ&ブルース・フェスティバル」では、ベレス・ハモンドがSteal De Show(もっともウケた、の意味)、ショーン・ポールやボウンティ・キラーが飛び入りで出てこちらもFire。
キングストンで行われたリロイ・シブルスのバースデイバッシュは、ブリギー、ジョジー・ウエイルズ、ジェネラル・ツリー、ジュニア・デマス、書ききれないほどのダンスホール重鎮アーティストが、オールディーズ・ファンを泣かせた。Real Fire!
「ファイアー」という言葉は、島では挨拶代わりにも使われて、ヴァイブスがアップする便利な言葉でもある。
Text and Illustration by Reiko NAGASE SMITH
Ricoのジャマイカ★ArtLife:http://www.ricoart.com
協力/アイランドツアー:http://www.islandtour.jp