Carlton & The Shoes
Been 12 Years TO Come Back

Text by Shizuo "EC" ishii
 

 60年代後半にレコーディングされ、76年にやっと日の目を見たファースト・アルバムを発売してから、今までにたったの4枚しかアルバムを出していないけれど、れっきとした現役アーティスト。しかも、その4枚ともクオリティは悪く無い。いや、正確にいうなら、スタジオ・ワンで出したファースト『Love Me Forever』(1) はロック・ステディのベスト・アルバムの3本指に入るだろう。では02年に出した最新の『Music For Lovers』(4) は? それならメチャ売れしているというミックス・アルバム『Sound Concierge #401 - Do Not Disturb』(6) に『Music For Lovers』から1曲「Love To Shar」をピックアップしているファンタスティック・プラスティック・マシーンの田中知之のこんなコメントを見ればいい。因みに彼は売れっ子FPMとして日本全国を駆け回り(いや、タランティーノ宅訪問の記事も見たなあ)、番組もこなしている多忙を絵に描いたような男なのだが、そんな彼からゲットしたコメントとは…
 「僕にとってカールトンは特別なシンガーです。何処がそんなに特別かって訊かれれば、明確には答えられないのだけれど、ジョアン・ジルベルトやチェット・ベイカーがそうなのと同じような感じなのです」。
 それでは82年に発売されて、長い間コレクター達の間で高価な値段で取り引きされていたアルバム『This Heart Of Mine』(2) はどうだ? これはこの中の「Give Me Little More」を96年にあのクレモンティーヌにカヴァー (7) させ、更にアスワドにもリミックスさせているMr.ロンサム・エコー=井出靖のコメントを聞いてみよう。
 「やはりカールトンの魅力は、何と言ってもあの甘く切ない声、そしてソウルを感じるメロディライン。キングストンでパンツ一枚で僕の目の前で歌ってくれた彼の事は、今でも大切な想い出」。
 死ぬ程音楽を聞いてきた二人の心温まるコメントもさることながら、こんなにも世の音楽マニアをうならせている男が今までに作ったのが、たった4枚のアルバム。ま、正確にはリヴ&ラヴやイギリスのファッション・レーベルやデニス・ブラウン兄弟がイギリスでやっていたDEBレーベルからも数曲のみリリースがある。DEBものは02年に日本で『Relaxin' With Lovers Vol.1』(5) の中にコンパイルされたのでご存じの方も多いはず。
 ま、とにかく超マイペースのミュージシャンである事は間違いない。しかも、ビシッと細みのスーツでオレの泊まっているキングストンのホテルに現れて「この曲のベースラインはオレが弾いたんだ、いいだろう?」とか言ってるかと思えば、未だに本人はルードボーイ精神バリバリで「オレはチャリンしか金をもらってねえ」とか、コクソンの悪口を言いながらパンツ一丁で自宅の庭でピンポンに興じていたりする。いわゆる「地球はオレの為に廻っている」と思っている愛すべき男のはしくれでもあるのだ。
 92年にOVERHEATが「ロック・ステディ・ナイト」で来日させて以来、このマイペース男が12年振りに「レゲエ・マジック!」でフィリス・ディロンやウインストン・フランシス等と共にやって来る。永遠のロック・ステディ青年か? ルードボーイか? 奴のファルセット・ヴォイスを聞いて確認して欲しい。おっと、その前にうちから出ているアルバムを買って、よ~く聞き込んでから行くように…ね。