Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Boris Gardiner
Greetings Friends,
●ジャマイカのNational Heroes Day (国民英雄記念日)はいつもお祭り騒ぎだ。それに伴いBeenie Man、Barrington Levy、John Holt、Beres Hammond、Boris Gardiner、The Mighty Diamonds、そしてLeroy Sibblesなど、有名アーティストによるショーが目白押しだった。この記念日には過去にSly & Robbie、Aton Ellis、Ernest Ranglinらにジャマイカの音楽産業の発展に貢献したとして特別奨励賞が授与されている。今年は、レゲエの灯火を絶え間ない努力によって燃やし続けたミュージシャン、Ken BootheとFreddie McGregorが同じ名誉を授与された。そして、おそらくBob Marleyの次に著名なレゲエ・アーティストであろうJimmy Cliffにはジャマイカで4番目に位の高い“Order Of Merit”が与えられた。英雄の日はジャマイカのようなラフでタフな環境の島にとって人々を団結し、奮い立たせるにはもってこいのコンセプトの祭典だと思う。イングランドでも叙勲のシステムはあるが、全て王位や政治的な絡みがあるものばかりだ。Benjamin Zephaniahは英国叙勲を授与されたが断ったらしい。なぜなら、彼の詩には明白に英国への不信感が綴られているのに、なぜ推薦者たちは彼を推薦したのか、本当に推薦人たちは彼の詩を読んだのだろうか?と彼は思ったらしい。彼こそが真の意味での英雄かもしれない。
●読者のみなさんはZiggy Marleyのニュー・アルバム『Dragonfly』をもう聴いただろうか? レゲエ好きのリスナーの方々は少々ガッカリしたに違いない。2/3ほどはカリフォルニアの若手ミュージシャンによるギターサウンドを前面に押し出した出来の悪いガラージ・ミュージックだ。R&Bの影に隠れて随所にレゲエの要素が見え隠れするが、David Bowieの最新アルバムをプロデュースしたTony Viscontiによるストリングスを加えたりとメジャーなロック・サウンド風の出来であることには変わりはない。アメリカ以外でのヒットは狙えないだろう。まあ、それがこのアルバムの意図であるとも思えるのだが。
●中近東の民族楽器に興味があるリスナーが見逃せないCDがリリースされた。『Morton's Foot』はベテラン・ミュージシャンであるEnja Signee Rabih Abou-Khalilの最新作だ。The Oudという楽器は1950年代にAhmed Abdul-Malikがジャズで使い始めたが、いまだレゲエではそれが使われている曲は聴いたことがない。過去のアルバムにはジャズとワールド・ミュージックの名だたるアーティスト達が参加している。彼の最高傑作と思われるのが、2、3年前にリリースされた『Cactus Of Knowledge』であり、次に発表され、ソロを多用したシンプルな『Il Sospiro』なども同様に素晴らしい出来だ。
●私のお気に入りであるジャズピアニスト、Andrew Hillがブルーノートからニュー・アルバム『Passing Ships』をリリースした。
●Blood And FireからTommy McCookの『Blazing Horns』(プロデューサーはいたる所に顔を出すBunny Leeだ)が再びリリースされた。基本的にTommyと彼と親しいミューシシャンがAgrovatorの懐かしく鋭いリズムを再演しているだけのアルバムで、決して出来は良くないのだが、とりあえず、McCookが聴けることに感謝!
●Trojanから相当前にアナログでリリースされたレア音源を集めたコンピレーション『Loch Ness Monster』が13曲のボーナス・トラックが追加され発売された。そして、UK在住で、まだそれほど知られていないDenzil Dennisがコンパイルした『Me Nah Worry』が最近、怒涛のように再発されるレゲエ・コンピCDのなかで光っている2枚だ。
●アメリカのミキサー、Madlibがブルーノート音源をリミックスした一連のCDは、彼がUs3のような同様プロジェクトを軽視する発言を繰り返しているせいなのか、イギリスのメディアの関心は薄い。最新作、『Shades Of Blue』はまあまあの出来だが、ブルーノートの膨大な音源に自由にアクセス出来たはずのDJ作品としてはやや消化不良ではないだろうか。勿論、ひどい内容の『Verve Remixed』シリーズに比べればいいかも知れないが、ラジオ番組のブルーノート特番のようなアルバムでは一体、誰が買うというのうだろうか? 彼の力量とブルーノートの音源を合わせればもっと素晴らしいモノになっていいはずなのだが。
Till Next Time, Take Care
(訳/Miyuki W. Myrthil)