キングストンの地名を知れば知るほど、ダンスホールを愉しめるんじゃないか。
昔からDJは、地名をよんで観客をのせるのが相場。サンフェスなど大きなショーだと「モンテゴベニアーン!」「キングストニアーン」「クラレンドニアーン」などと呼ぶ地区名も規模が大きいけれど、ダンスでは、コミュニティの名前が出てくる。あになでぃえあ。 ジャマイカの地図をゲットしていただいて、キングストン市内地図を詳細に見ていただきたい。キングストンには、地図にない地名が多い。おまけにそういう地名こそ、リリックに登場するときている。たとえば、ジャングル、リマ、テルアビブ、ダンカークにバックブッシュ、フレッチャーズランド、スポイラーズ。ちなみに「ジャングル(またはコンクリートジャングル)」は、アーネットガーデンの俗名であるが、アーネットガーデンという地名自体、地図には載っていない。リマはウィルトンガーデンの俗名、サウスサイドは地図に載っているが、テルアビブはない。どういう基準なのかよくわからないが、これが原因で喧嘩に発展しないのか。別段そういう地名を知ってもトクすることはないけどさ。さらに、どの地区がどちらの政党の陣地で、どの地区と仲が悪いか、など知ると、それこそ役に立つことなんて何もないけど、でもダンスホールのリリックは楽しめます。さらに、どのDJがどの地区出身かというのは、知っていると面白い。ヴァイブス・カーテルは、ポートモアのイメージアップにかなり貢献していると思う。さて、今年ブレイクした、グランツペン出身のDJは誰でしょう。
話題はパサパサウェンズデーの盛況ぶり。場所はスパニッシュタウン・ロードとブレッド・レーンが交差するところ。SWATCH Internationalのヘッドクオーター。泣く子も黙るティバリガーデン。パサパサ地区。この毎週水曜の夜は、2年前にジャマイカ中がシャットダウンするほどの暴動が起こったところだとは想像もつかない。今年3月にコミュニティダンスとして小さくはじまったこのダンス。月曜はホットマンデイズ(注:このダンスは現在お休み中)、火曜や木曜はアサイラム、水曜が穴日だったので始めたら、半年後に大当たり。どこのエンターテイメント番組でも紹介され、アップタウンの人たちにも受け入れられて、ダンスホールの有名人ばかりか、スポーツ選手や文化人のPassin' Thru(パッシンチュー)も目撃。ハイネケンスタータイムほどの平和ぶり、と書いてしまおう。この手のダンスがテレビで紹介されるというのは、今までになかったこと。
ここまで人気が出ると、このイベントはコミュニティの大切な収入源となる。 最近不法屋台の取り締まりが強化されて著しいが、この屋外ダンスではベンダー(物売りの人たち)も大活躍。ビール、たばこ、ジャークチキンにスープ、ハイグレード、一大ビジネスだ。下町がダンス会場の場合、駐車に困るが、この夜はコミュニティが一丸となって、交通駐車整理をしてくれるので、日曜夜のレイタウンのように駐車もできる。
'80年代レッドヒルズロードのフロントライン、'90年代トップラインにレオの館のストーンラヴ、のような、時代を象徴するダンスとなりそう。 このダンス、早い時間に行かないのが愉しむコツ。人が集まるのは夜中2時過ぎ。早い時間はオールディーズ、そしてニューリリースの紹介コーナーやヒットチャート発表、Skin Outギャルもいっぱいで、Hottie Hottieコンテストなども有り。トニー・マタロンやリッキー・チューパー、ストーン・ラヴやメトロメディアのクルー等も入ります。それから、必ずこの地区には明るい人と同行を。
泣く子も黙る、が、泣く子も踊るティバリガーデンに変貌する夜。てゆーか、朝。でもダンスは6時にやめないと、そのうちポリスが止めに来ちゃうよとハラハラするよ。 オレンジの服は、着ていかない方がいいかな。念のため。
Reiko NAGASE SMITH
(協力/アイランドツアー:http://www.nabra.co.jp/island/)
「Ricoのジャマイカ、Art Life」:http://www.ricoart.com