ジャメーカンはRiddimピープル。行動も態度も歩き方もリディムなら、話し言葉もリディム、スピリットもリディム。そして彼ら特有のリズム感はダンスで表現される。
彼らのダンスは煽情的で性的な動きをするものが多い。毎日がレゲエでベースがリディムなら、ダンスはいつも日常にある。誘い言葉も「ダンスしよう」。ナンパもコンパもダンスだもんね。ダンスくらい、と思って受け入れると、とんでもなくダンス以上だったりする。それがワインダンス。「Yu Can Wine?」が合言葉。英語のWind(ワインド=巻く、うねるの意)からきたこの言葉、例の腰を落として男女で下半身くっつけ合う、あのダンスのこと。
このように男女間の愛情も、日常生活の喜びも、人生の悲哀もダンスで表現する。さらにはお葬式もダンス、そう、ダンスで哀しみを癒します。ナインナイト(略してナイナイ)やフォーティ(40)ナイトとよばれる日本のお通夜や49日にあたる儀式でも、ダンスは欠かせません。
今回はジャマイカの、今も残る伝統ダンスをご紹介。
●Kumina(クミナ)=ジャマイカに今も残る土着宗教のひとつ。西アフリカ発祥のジャマイカ伝統ダンスの名称でもある。右足を引きずるように地面につけたまま、左足のステップで回って踊る。ジャマイカのセントトーマスとセントメアリーで盛ん。この二教区は、土着宗教が最も残っている土地である。
●Revival(リバイバル)=土着宗教とキリスト教が融合したジャマイカで盛んな宗教の一つ。有名なポコメーニアとザイオンダンスはリバイバリストのダンス。
●Jonkanoo(ジョンカヌー)=アフリカを起源とし、ヨーロッパの影響もあるジャマイカの伝統仮装ダンス。クリスマスの行事。
●Dinki Mini (ディンキミニまたはMinnie Gerreh[ミニーゲレ])=お葬式によく踊るダンス。
●Etu(エトゥ)=ハノーバー地方に残る祝祭のダンス。お葬式にも。
●Nago(ナゴ)=ウェストモアランドに古くから伝わるダンス。Etuに似ている。
●Maroon Dance=セントエリザベスやポートランドにあるマルーンとよばれる英国植民地時代の勇士逃亡奴隷の子孫が住む村に残る、癒しのダンス。
●Rastafari Movements=火と力をあらわすダンス。ナイヤビンギのドラムに合わせてダンス。
●Maypole(メイポール)=式典に踊られる、丸柱とロープを使った英国のマスダンス。
●その他:Brukins(ブルキンス)、Quadrille(クワドリル)、Buru(ブル)、Tambu(タンブ)など。(以上キングストンのInstitute of Jamaicaの展示を参照)
今の流行りのダンスが、伝統ダンスをどう受け継いでいるのか、又は別物なのかは定かではないけど、「ログ・オン」辺りから、エレファント・マンのチューンにのって、みんなで仲良く楽しくダンス的、なのが続いている。思いつくまま書いてみよう。回顧モード。以下全てダンスの名称。さあ、行くぞ。
Water Pumpie(ウォーター・パンピ)、Cool and Deadly、Dela Move(デラムーブ)、Pelpa(ペルパ)、Pelpit(ペルピット)、Bogle(ボーグル)、Mission Impossible、The Wave、Hurkle(ハークル)、Mock De Dread(モックデ・ドレッド・ドレッドの真似ダンス。ラスタマンを怒らせちゃったよね)、Heel and Toe、Prang(プラン)、Jerry Springer(同時にミスタービーンなんてダンスもあったっけ)、World Dance、Pop The Collar、Tattie(タティ)、Butterfly(バタフライ…当時大人から子供まで大ウケしましたね)、Screechie(スクリーチー)、Rockaway(ロッカウェイ)、Fan Down The Bus、Handcart、Thunder、Lightning、Zagga Zow(ザガゾウ…ビーニマンがよく使う言葉です)、Higher Level、Shelly Belly、Fly The Kite(フライザ・カイト…凧揚げをしている要領でダンス)、Fan Dem Off(ファン・デム・オフ…ウチワであおるようにダンス)、Shake Dem Off(シェイク・デム・オフ)、Excitement、Step Up Inna Life(人気TVCFより流行り言葉になっている)、Online、Log On(練習しましたよね)、Blase Blase、Elbow Dem、Hop The Ferry、Kick Dem Out、Crazy Hype(クレイジー・ハイプ)、Rain Drops、Tambourine(タンバリン)、Piano、Beat The Drum、Play The Guitar、Tek Off Yu Head(テクオフユ・ヘッド)、Screw The Bulb、Pon Di River Pon Di Bank、Signal Di Plane(シグナルデ・プレイン)、Give Dem A Run、Parachute(パラシュート)、Row The Boat、Three Pointer、Cut Off De Grass...。
さて、これらのダンスの名称は、'90年代初めに一世風靡した「ボーグル」など、そのダンスを創った人の名前から「チャップリン」など有名人をあらわすダンス、バタフライなどダンスの特徴を名前にしたもの、「ワールドダンス」や「ログ・オン」などヒット・チューンとダンスと流行り言葉が一体化したワンセットものなどいろいろ。楽器も重量挙げも仕事も自然現象もすべてダンスにしてしまう。
最近のダンスの傾向は、動作がそのままダンスの名前になっているので、もうとってもキャッチしやすく素人向けでもある。「ロウ・ザ・ボート(ボートを漕ぐ要領で)」「エルボウ・デム(肘を突く)」や「テクオフデ・ヘッド(頭を回して振る)」などは、名前を聞いただけで想像できちゃうダンスでしょ。ダンス会場では、MCやセレクター、DJがダンス名を言ってくれるので、それに合わせて踊るからわかりやす過ぎるほど。皆が同じ動作をするのはハタから見ると?かもだが、Unitedで平和この上なし。「ギブデム・ア・ラン」なんかみんな一斉に走るポーズして超可笑しい。
先月号に書いたキングストンの「曜日ごと毎週ダンス」はますます盛況で、ホットマンデイズのアニバーサリーダンスもキングストンでビッグに。ホットマンデイズの成功から、毎週木曜、モベイのブルーダイアモンド・プラザにある新しいクラブVIPで、ホットサーズディズが始まって大人気。これを書いているある昼下がりも、ラジオから流れる新しいチューンは、次はこれかなと思わせるダンスチューン。ダンスはやっぱり踊るためにある。今日も愉しくヤードコア・ダンス!
Reiko NAGASE SMITH
(協力/アイランドツアー:http://www.nabra.co.jp/island/)
「Ricoのジャマイカ、Art Life」:http://www.ricoart.com