Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Junior Delgado
Greetings Friends,
●イングランドとヨーロッパのほぼ全土での猛暑(8月には約4,000人がフランスで熱さのために死亡した)はヴァケーションの時期と重なり、上がりっぱなしの気温とは対象的にレゲエ・シーンは少々お寒い状況だった。レゲエに関して言えば2、3のコンサートとそれと同数のCDがリリースされた程度で、クリスマスまでのいわゆる閑散期入ったようだ。
●Patti Smithのお陰で国際的な活躍がスタートできた70年代のDJ、Tappa Zukieのファースト・アルバム『Man A Warrior』(永らく廃盤扱いになっていた)が遂にアナログで再プレスされた。彼はDJとして活躍した後、自身のレーベルを創設し、プロダクションとアナログのプレス工場も経営している。この再発売には自社以外のカタログにも触手を伸ばしているのか、あのTrojanレーベルが関っている。Patti SmithのMERレーベルからリリースされたオリジナルのアナログ盤の値段は、よっぽどのコレクター以外手が出せないほど高いと思うので、この再発盤を見かけたら手にしてみる価値はあるだろう。
●そのTappa Zukieのアルバムに比べるとレア度は落ちるかもしれないが、The Upsettersの『Return Of The Django』が8曲の未発売トラックを含めてTrojanから再発された。
●Lee 'Scratch' Perryの4夜連続公演が11月にJazz Cafeで行われることが決まった。このショーではプロダクション・パートナーのMad Professorがミキシングを担当するので、普段の彼のステージより印象深いものになるはずだ。80年代初期にPerryがイギリスのステージにカムバックした時も、Black Arkサウンドを強力なミュージシャン達と共に精密に再現したのがMad Professorだった。
●今年で3、4回目となるであろうJohn Holtとロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとのジョイント・コンサート「Big Peoples Show」が11月に開催予定だ。このショーは一部の人にとっては“ダサイ”と敬遠されるだろうが、John HoltとLloyd Parkeが率いるWe The People Bandが生オーケストラでサポートされる様子は一生のうちに一見の価値があると思う。全てにおいて華やかなこのイベントは、来場客もこれでもかといわんばかりにドレス・アップしてくるし、毎回満員御礼を記録している。因みに、初年度のハイライトをCD2枚に収録したアルバムがJetstarからリリースされている。
●偶然なことにLucianoのJetstarからのセカンド・アルバム『Visions』はロンドン・レゲエ・チャートで5位に入っている。このアルバムは、チャートでGreensleevesからの“One-Riddim”シリーズ以外のモノとしてチャート・インしている数少ない作品のひとつだ。
●Jetstarの“Toe To Toe”シリーズ第5作目に収録されているアーティストは現在のシーンで最も精力的にリリースを続けているJunior KellyとSizzlaだ。加えておくと、このアルバムのジャケットを飾っている写真を撮ったのが僕だ(別にそれだからといって推薦したわではないが、念のため)。
●僕のような“熟練した”リスナーにとって今月、最も興味深い作品はPressure Soundsからの『The Red Bumb Ball』だ。22曲入りのこのディスクには1966-68年のレアや未発表のロック・ステディが収録されている。収録曲の大半を素晴らしいがあまり知られていないバンド、Lynn Tait & The Jetsとその時代の代表ミュージシャンが演奏している。ライナーノーツにはTait自身がこう書いている「我々は単に美しい音楽を創ることに興味があるだけだ」。他にどんな言葉が必要であろうか!
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●Pressure SoundsはAdrian Sherwoodが主宰するOn-Uが抱えるレーベルの一つで復刻盤を専門としているが、そんな彼が、新たにSound Boyというレ-ベルを立ち上げた。そのレーベルの初リリースは初期のJunior Delgadoの曲を16トラック集めた『Original Guerrilla Music』だ。
●ジャズ好き諸君へ。僕の一番お気に入りのラテン・ピアニスト、Danillo Perezのニュー・アルバム『Till Then』が現在、ロンドン・ジャズ・チャートの1位に輝いている。Ahmed Abdul-Malikの『Sounds Of Africa』は、40年前に最初にこのアルバムがLPで発売された時と同じような新鮮な衝撃をリスナーに届けてくれるだろう。前述のCDより見劣りするかもしれないがDonald Byrdの 『Caricatures』とGary Bartzの『Music Is My Sanctuary』がブルーノート・レーベルから再発された。両アルバムとも70年代中期のフュージョン時代の傑作だ。
●最後に、Blood & Fireレーベルについて。このレーベルが持っているオールディーズのカタログ(Bunny Lee のプロダクションとそのダブが多すぎることが欠点だが)の質と量は素晴らしい。セレクター(後にプロデュサーとして活躍した)Jah ScrewのDJ、Ranking JoeのCD『Zion Gates』がこのレーベルから発売された。彼はツアー・メンバーとしてBlood & Fire Sound Crewと時々活躍している。
Till Next Time, Take Care
(訳/Miyuki W. Myrthil)