UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Roy Shirley


Greetings Friends,
   
●今年のイギリスやヨーロッパは過去数年には例を見ない程の熱波に見舞われている。UKでは気温38度を記録し、筆者が夏の殆どを過ごしたフランスでは何と45度にまで上がったのだ! 冷房の効いた店内から一歩踏み出すとオーブンのような熱気にさらされ、まるでジャマイカのようだ!

●上から押し付けられた制約により、Notting Hill Carnivalがあまり快適なものでなくなってしまった数年前から、筆者は足を運ぶことを諦めてしまったが、それでも毎年押し寄せる新しい世代の観客達と共に、同イベントは成功を続けている。今年のAugust Bankでのホリデー・イベントに参加したものはとても楽しい時を過ごしたことと思うが、あの暑さを考えるだけで思いとどまってしまうのだ。

●本稿の執筆に取りかかる前日、興奮気味のLevi Rootsから電話が入った。元DJでありCoxsone Outanational SoundのかつてのメンバーでもあったLeviは、その作品において、堂々としたルーツ・チャントを聴かせ、またLuciano やEarl Sixteenなどのプロデュースで、印象的な手腕によって一躍名をあげた人物であるが、その彼がMafia & Fluxyと共に新作の『Red Hot』を仕上げたというのだ。ラジオやダンスにて限定でプレイした中でのレスポンスを受けて、Leviは本作が自分の評判を強固なものに出来るだろうと期待している。まず最初の見返りが、Mad Professorとのニュー・アルバム制作へ向けての始動のニュース。『Red Hot』の評判を聞きつけて彼がLeviを自身のスタジオへ招待したというのだ。Sly&Robbie によってリズムは既に録音済みとのことで、Leviが大層御満悦ですぐにでも仕事に取りかかりたいと言うのも無理はない。

●ところで、好機にかこつけて私服を肥やすのが得意なTrojanが、前述のロンドンのカーニヴァルのタイミングに合わせて、『'Carnival Box Set』という3枚組をリリースした。「夏にぴったりな50曲」の触れ込みで宣伝している! また、既にリパッケージ版再発ものとして『Trojan 35th Anniversary Box Set』、Gregory Isaacsの『Cool Ruler』コレクション、失笑を誘うネーミングの『Chill-Out Box Set』、そして『Big Seven』と名付けられた、故Judge Dread作品集等が発表される。もっと趣味の良い読者諸兄の食指を動かすのはDandy Livingstoneの『Catch The Beat』、もしくはRoy Shirleyの『Music Is The Key』だろう。ただし一つだけ断っておきたいのが、これらのコレクションを聴いた大抵の人間がその酷いサウンド・クオリティに難癖をつけているということ。 

●Notting HillにあるHonest Jonのレコード・ショップが発表したCedric 'Im' Brookeの『Lights Of Saba』が目下大変な人気である。70年代後半のこれらのトラックのインパクトや重要性は、このアルバムが色々なマーケットで飛ぶような売れ行きであることと、Roots & CultureやJazzの両チャートにランクインしたことからも理解できる。リリース当初にはほぼ見向きもされなかったことを考えれば、今のこの状況がいかに注目に値すべきことか! 筆者が好きなのはこういうリイシューものだ(小規模ながらもインディペンデントで、質の高い音楽に重きを置いたもの)。

●まだ聴いていないのだが、ジャマイカのTesfaレーベルから発表されたLucianoとLeroy Brown の、それぞれ「Princesses And Princes」「Love Me Tenderly」と題された新曲がどちらもAbyssiniansの「Y Mas Gan」のリズムを使用しており、筆者の友人はオリジナルで使われているものと区別がつかないと言っていた。推測するに、それらは多分全く同じなのだろう。というのはTestaは数年前イギリスで、AbyssiniansのDonald Manningによって作られたレーベルだし、「Y Mas Gan」のようなキラー・リズムはもっとプレイされて然るべきで、それにあのリズムを再使用するのに、オリジナル・メンバーほど相応しい人間はいないだろうから。因みに2年程前に素晴らしいリカットにて前述のリズムを紹介したのはQueen Omegaのデビュー・アルバムであった。

●次世代の幕開けと共に姿を消してしまったかのように思われていたMaxi Priestが、ShaggyのBig Yardクルーの手によりようやく再浮上する見込み。ラガ・ヒップホップの「Are U Ready」で Red Foxと組み、VPが配給と宣伝を受け負うとあって、Maxiにとって国際的なカムバックの大きなチャンスとなることは間違いない。因みに筆者は84年、まだ駆け出し同然のMaxiにとって初めてとなるインタビューをし、彼の初コンサートのレヴューもしている。サウス・ロンドン出身のレゲエ・マンの彼の幸運を祈る。

●アメリカやイギリスのチャートにおいてWayne Wonderがスーパースターとなったのは承知の通りであるが、ライヴ・ショウにおいて、少なくともここUKでは、彼はいまだに昔ながらのレゲエ会場での公演を強いられている。9月にロンドン公演を控えているものの、会場となるのは、あまりプロモーターを触発することもないHackney's Oceansである。

●Beyonceの『Dangerously In Love』は要チェック。Jay-Z、Sean Paul)、Sleepy Brown等、素晴らしく効果的なゲストを迎えた若い歌姫は真剣だ。Mary J. Bligeの『No More Drama』の時のように、CDプレイヤーから取り出すことは困難だ。

●UKのラヴァーズ・ロックが懐胎し始めたのは20年以上も昔のことになり、現在ではレゲエのサブ・ジャンルとして立派に定着しているが、今になって当時のアーティスト達がどこからともなく現れリバイバル・ショウを行っている。ラインアップとして代表的なのが、Trevor Walters、 Paulette Tajah、Vivian Jonesの3人。メロディ、リアル・チューン、そして正しい歌唱を好む年輩の世代が現在の貪欲なダンス・ホール・シーンに背を向ける中、彼らのようなアーティストが今後さらに増えてくることだろう。

●Morgan Heritageは9月のロンドン公演で巨大なホールや会館を避け、代わりにCamden TownにあるJazz Cafeにて二夜連続のパフォーマンスを披露する。レゲエ愛好家以外にもリーチする好機となるかもしれないが、あの会場はあまりにも小さく薄汚れているし、きちんと観賞するのは難しい。それに照明だってお粗末なもの…。

●退屈なワン・リズム・アルバムの人気が何故ここまで持続しているのか、その理由は未だもって謎であるが、Greensleevesはそれでも尚、このフォーマットがもたらす利益を目当てに『20 Cent』『Sign』『Jumble』をリリース。おかげで来月までは居眠りに最適なBGMには事欠かないであろう!
Till Next Time, Take Care
 
(訳/Miyuki W. Myrthil)


Wayne Wonder