Moomin
Remixes
 
Text by Takeshi Futatsugi / Photo by Masataka Ishida
 
 
   Moominの『Rise Again』がリミックス使用(ミニ・アルバム)でバック・アゲイン。計6曲を6組のアーティスト/クリエイターが解体/再構築し、“Moominらしさ”にコダワりつつも、新しい解釈を加えたその作品集『Rise Again Remixes』の内容はと言うと…

●「栽培したい~世界中で~(Saigenji Pagode Mix)」  某TV番組のタイアップでもお馴染みの、三木道三のペンによるこの曲のボサノヴァ・アレンジで涼し気に聴かせてくれるのは、2ndソロ・アルバムも絶好調なギタリスト&ヴォイス・パフォーマー=Saigenji。ご存知の方も多いと思うが、Moominとのセッションはこれが2度目、となる。これまでもアコースティック・セッションでその伸びの良い美声を光らせていたMoominだが、ここでのサウダージ感はまた格別のモノがある。Saigenjiのコーラスの絡み方も気持ち良い。 ●「Rise Again(BDM Re-Session Mix)」  Butter Gog Marketとはまた聴き馴れない名前だが、実はあのスーパー・オリジナル・ファンク・ロック・バンド=Super Butter Dogの4ピース別動隊で、今回がこの名前で初仕事となる。Moominのフェイバリット・アーティスト=スピーチのリミックスも手掛けたこともあるギタリスト、竹内朋康のカッティングを中心に、オリジナル版とは全く別のコード、展開も用意された“バンド・リミックス”の成功例。和製タイガー(!?)、Toraumaのアクの強い声とフレーズも見事に活きている。 ●「星くずのダンス・ホール(Flamenco Chill Mix)」  『Rise Again』の大ラスを飾っていたこのシャネルズのカヴァーにフラメンコのフレイヴァーを導入したのは、南米音楽をいつも独特の解釈で楽しませてくれる金原千恵子(金原千恵子ストリングス)。ストリングス・アレンジも素晴らしく、熱気漂う、しかし壮快なダンス・チューンに。  「リミックス初体験! 胸がキュンとするメロだったのでスパニッシュ・ギターをフィーチャーしました。今度ライヴによんでください!」(金原千恵子) ●「いつもそばで(DJ PMX Laid Back Remix)」  シングル曲として知られるこの曲のリミックスは、DS455のメンバーであり、ソロとしても“フューチャー・ショック”と契約しているDJ PMXが担当。言うまでもなく、PMX節全開のウエストコースト・ヒップホップに“変身”している(後半のギター・ソロも“らしい”)。このメロウかつドープな仕上がりは、Moominのシンガーとしての資質と実は絶妙にマッチしていたりする。 ●「Don't Make Me Over(Expansion Term Remix)」  バカラック&デイヴィッド作の古典曲を、ダンスホール・マナーで歌ったこの名カヴァーは、昨年の来日公演もまだ記憶に新しいダイレイテッド・ピープルズのDJ Babu & Rakaaがリミックス。シンプルの極み、そのもののビートの構造美、そしてライヴDJとしても間違いなくNo.1のDJ Babuによるカユいところに手が届くようなスクラッチに、Rakaaの持ち味が良く出たラップ・パート、と正に万全の仕上がり!  「このプロジェクトはとても楽しかった。歌詞にある、ドラマティックな面とフラストレーションをハイライトするために相反する“複雑”と“シンプル”を融合させ、トラックとラップのリリックを作ったんだ。結果、とてもドープなチューンに仕上がったと思うよ」(Rakaa) ●「にじんだ浜辺(Takahiro Watanabe Remix)」  アルバムの中でも最も“泣き”の効いていたこの曲は、これまでのMoominプロジェクトにも関わってきたキーボード・プレイヤー/サウンド・プロデューサーの渡辺タカヒロがリミックス。遠鳴りのような鍵盤フレーズに、出入りの激しいベース・ライン等、様々なアイディアが機能的に生かされたグルーヴィー・サウンド。“締め”に相応しい一曲、だ。  リミックス・アルバムらしくダンスホール仕立ては一曲もなく、逆に“Moominというジャンルを越えたシンガーの魅力”を違った角度から引き出すことに成功した内容、であることは言うまでもない。『Rise Again』と“セット”でお楽しみあれ!

"Rise Again - Remixes"
Moomin
[Unibersal / UPCH-1277]