レゲ絵 第4回  
ミリー・スモール
Painted by Yagi / Text by Noboru Yamana


 
  芸名をつける時に、単に体がデカいから、あるいはこれから有名になるぞと意気込んで「ビッグ・ナニガシ」とする場合はよくあるが、そんな名前のアーティストばかりになれば、すぐに反動があって、「僕は大きいんじゃなくて、長いのさ」=ロング・ジョン・ボールドリーとか、「小さいことにコンプレックスがあったら、オカマなんかやってられないわよ」=リトル・リチャード、「体じゃないんだよ、若さだろ」=ヤング・ラスカルズ、というような連中が出てくる。女性歌手なら、むしろ小柄なことを売りにして、ミリー・スモールやリトル・エヴァが登場した。両者ともに、パンチ効きまくりの歌を歌う。
 誰かがロンドンにホームステイしていたら、その大家さんがミリーだった、というような話を昔聞いたことがあったが、詳細は忘れてしまった。このコラム、実は存命のアーティストの登場は彼女が最初である。「マイ・ボーイ・ロリポップ」の世界的なヒットの64年は、まだ18歳だから、現在でも50代半ば。ただ、彼女を担ぎ出してもう一度吹き込みさせようとか、フェスティヴァルに出てもらおう、そんな企画はほとんど実現されていないようだ。
 あのLKJと同じクラレンドン生まれ。ミリーの一生も、そのヒットにもし自分がもてあそばれたのなら(逆にその後もシッカリ者だったかも)、本の一冊や二冊は残しておいて欲しい、「数奇な」それだったことを期待してしまう。