Another Side Of PUSHIM
Pak's Groove
Photo by Kobayashi Taxi
昨年夏にセカンド・アルバム『Colors』をリリースし、そして年末にはワン・ウェイ・コンピレーション『Music Is Mystic』を制作…とレゲエ・シンガー/プロデューサーとして精力的に活動を展開してきたPushimの新作が早くも届いた。
タイトルは『Pak's Groove』。5曲入りのミニ・アルバムだが、そこに収録されている楽曲はどれもレゲエではなくジャズやソウル、R&Bのテイストを全面に押し出した所謂歌モノといった内容のもので、正に彼女の歌を充分に堪能できる仕上がりとなっている。自らをレゲエ・シンガーと称して憚らない彼女だが、そのシンガーとしてのポテンシャルはひとつのジャンルに収まり切らない程、才能豊かなものがあると言っても過言ではない。そしてそういった作品を聞きたがっていたファンも多かったのではないか。
今回の制作は、Pushim、そして藤本和則と渡辺貴浩の3名による共同プロデュース。藤本和則は、Chemistry等の作品で知られるコンポーザー/プロデューサーで、Pushimの作品でも「Strong Woman」などを手掛けている。渡辺貴浩は、数々のアーティスト達とのレコーディング/ライヴ・セッションで知られるキーボーディストで彼女のバンドにも参加している。そんな気心の知れた面子と何度もスタジオに入りプリプロダクションを重ね、トラックを作り、そこにメロディーをのせリリックを完成させるという作業がゆっくり、そしてじっくりと行われていった。CDを聞けば分かるが、あたかもいろいろな色の糸を紡ぎ合わせたかのような繊細な部分が、音にもPushim自身のヴォーカル表現にも聞き取ることができる筈だ。
ジャジーなピアノのループに野太いベースとタイトなビートが絡む「The Race Of Love」(この曲のプロモーション・ヴィデオがまたかっこいい! モノクロの映像で、かなりスタイリッシュに仕上がっている)、オリジナルとして初めて英語詞に取り組んだバラード「Pleasures」、どこか80代っぽい空気を感じさせるボコーダー使いのダンサブル・ナンバー「Sagittarius」、フルートのループそしてウッド・ベースとジャズ・ギターが楽曲の持つ切なさを見事に表現している「Whenever You Are」、そしてCMソングとしておなじみのカヴァー「Only You」。どの曲も実はラヴ・ソングなのだ。これもまたこれまでのPushimの作品とは一味違った内容なのである。
そして注目すべきは、今回起用されているエンジニアだろう。「Only You」を除く全ての作品のミックスを行っているのは、ヴァージニアを拠点に活動しているSerban Gheneaというエンジニアで、ジル・スコットやネプチューンズ、そしてミュージック・ソウルチャイルドやダネル・ジョーンズといった一線級のアーティストの作品を数多く手掛けている。音の立ち具合(!)そしてヴォーカルの処理具合ともに文句のつけようのない仕上がりで、更にPushimのほとんどの作品を手掛けているTom Coyneのマスタリングによって、よりサウンド的な磨きが施されている。
Pushimにとってレゲエの作品が本道であり、この後予定されているサード・アルバムもレゲエ・アルバムとなるという。そのためにも彼女の中にある異なる側面をひとつのまとまった形で表現したかったのだそうだ。正に "Another Side Of Pushim"。彼女のアーティストとしての懐の深さを感じさせてくれる作品だ。