
その1、恐れ多くもボブ・マーリーの似顔絵を描いていてふと気がついたのだけれど、アルバム『ナッティ・ドレッド』の頃のボブちゃんのロックスは、今だったら決して「ナッティ(=きれいな)」とは言えないんじゃないか。ボブちゃんのようなロックスは、ジャマイカでも40代以上のラスタマンに多く、ヤングスターのドレッドは、引っ張ったら切れてしまいそうな細いロックスが主流で、根元まで同じ細さで綺麗に集まっている。先日グラミー賞レゲエ部門を獲得したジュニア・ゴング(マーリー家の末息子)は若いのにダディに似たスタイルだけど。
黒人の髪質は、普通自然に伸ばして櫛を入れないでいればドレッドロックスに仕上がる。が、きれいなロックスを作ろうと思えばシャンプー後、根元を指で整えてあげるなど、お手入れも大変なのよ。大変でも床屋には行けないし。ファッションで髪をドレッドにしているジャマイカ人は、一部ネグリルなど観光地にはいても、ジャマイカには意外に少ないと思う。髪をドレッドのように少し伸ばして、ねじったり編んだり根元でとめたりしたスタイルや、今ちょっと流行りなアフロは、ラスタとは無関係です、よろしくね。
髪を伸ばしてドレッドにすれば、ドレッドとして生きる生活が待っている。もうその日から、ビーフパティは食べられないし、超ダンスホールな女のコを連れても歩けない。ラスタってジャマイカではそういうもの。ジュニア・リードがボボになってからアントニーB、ケイプルトン、シズラと'90年代中旬からボボ人気が高まり、今やネグリルのドレッドまで、帯状の長い布をターバンにした「ボボ巻き」をしていたりする。ブジュも時にボボ巻きにしているし。
だけれどそれ以前は、ボボはボボとして扱われていた。ボボの意味はパトワで「Fool」、皆様ご愛用の『パトワ語ハンドブック』にも、「ボボ=ばか」としっかり書いてある。ボボは「ぶるーむぶるーむ」と言いながら箒(ほうき)を頭や肩に担いで街で売る人、そして急に立ち止まって「じゃーらーすたふぁーらい」と叫ぶ人、だったのだ一昔前までは。それがいつのまにか、ボボ巻きがイケてるとされているようなのである。 ラスタファリアンにも宗派はある。トゥエルヴ・トライブ(十二氏族)、ナイアビンギ、エチオピアン・オーソドックス・チャーチ(エチオピア正統教会)、エチオピアン・ワールド・フェデレーション、ボボ・シャンティなどだ。ただし、ラスタファリアンは無所属派が圧倒的に多く、教会にも集会にも行かず、リーダーも存在しないのが普通である。宗教というよりは生活信条だもの。が、一方で、ラスタファリアンばかりが集まって住むラスタコミューンもあるし、教会のある宗派もある。外国人でも行くことは可能だ。
トゥエルヴ・トライブはホープロード83(ボブ・マーリー博物館の斜め前)に集会所があり、毎月第一日曜の夜に集会がある。メンバーは緑・ゴールド(黄)・赤の三色で分けた毛糸のタムを被って、公の行事では白い服を着る。誕生にまつわる部族の名と色を授かる。例えば私は7月で、ユダで茶色。占いのようで面白い。十二氏族のメンバーにはアーティストや知識層が多く、男女が同じ役割をするのも特徴的だ。女性が多い宗派はラスタには珍しい。
エチオピアン・オーソドックス・チャーチはキングストンのマックスフィールド・アベニューにあるチルドレンズ・ホームの近くにあり、日曜の朝に礼拝が行われる。この教会は本来エチオピアの国教で、ラスタの教会というわけではないのだけど、かなりのラスタファリアンの心を掴んでいるようだ。ナイアビンギもあるよ。イスラエル十二氏族のメンバーだったボブ・マーリーが、生前、実母セデラブッカーに勧められて入会したことで有名で、マーリー家御用達の教会だ。礼拝には男性は襟付きシャツにスラックス、女性はスカーフか帽子などで頭を被い、ロングスカート着用のこと。司祭のお話が実に感動的なのでおすすめの教会だけど、英語がわからないとちょっと苦しいかな。
最近ファッション的にまで影響を与えているボボシャンティは、キングストン市内から車で約45分、ロックフォートやハーバーヴューを越えてセントトーマス方面に走ったところにある。こちらは集会所にキャンプ、アコモデーションまである。行きやすいところでは、毎週土曜日(かなり不定期)の、ダウンタウンはパレードの公園内でラスタファリアンの集会が行われている。ジャマイカに来たら是非ラスタを学んで。Jah! Rastafari!