Herlding Digital-B
Text by Takanori Ishikawa/ Photo by EC
90年代のルーツ系ダンスホールを紹介するというコンセプトを持つ新レーベル、Maximum Pressureの第一弾は、当時シーンを席巻したデジタルBの音源集。今の時代だからこそ、基本=デジBを押さえておきたい。
様々な再発レーベルが誕生する昨今、ちょっと異色の再発レーベル、Maximum Pressureが誕生した。この新レーベル、レーベル名からも察する事が出来る様に、二つのレーベルが手を組んで運営されるようだ。一つはここ数年来、良質なダンスホールの7"シングルのリリースが目立つ、Maximum Sound。ビーニ・マン、エレファントマン、T.O.K.ら現地一流アーティストを起用してジャグリン向けトラックからラバダブまで幅広い音作りで人気のダンスホール・レーベルだ。もう一つは、Pressure Sounds。
言わずと知れた70年代以降のジャマイカン・レゲエを発掘・再編集し続けるグッド・プロダクション。ここ7年間、このレーベルを運営しているピート・ホールズワースのリー・ペリーものなどを再発見、再提示する手腕は内外でも評価が高いのはご承知のところ。
異色と言えば異色な二組が顔合わせによる新レーベルだが、今後の展開が要注目なのは、今回紹介するレーベルの記念すべき第一弾アルバム『The Best Of Bobby Digitals, Roots Productions』を聞いて貰えば分かるはず。全18曲収録のこのアルバム、タイトルを見ればお解りの通り、Digital-B、Brick Wall等、ボビー″デジタル″ディクソン・プロデュースの曲を集めたもの。何曲かの例外を除いては、ここ3、4年のリリース曲で構成されている。
サウンド的には過去のルーツ・レゲエの名曲をリメイクしたトラックで埋め尽くされているが、この打ち込みによる過去の名作リメイクはDigital-Bの十八番。このプロデューサーのファンもそうでない人も安心して聞ける事は確実だろう。アーティストもココ・ティ、シャバ・ランクス、ガーネット・シルク、モーガン・ヘリティジ等、実力派ばかり。おっとラストはサンチェスだ。
又、「Roots Productions」とタイトルに名付けられている様に全曲リリックスはラスタマン・アンセム、社会・政治批判(バビロン攻撃)等の正調ルーツ・レゲエの意志を継ぐものばかり。サウンド面よりも、このリリックス面の統一振りが「Roots Productions」という名にふさわしい内容となっている。当然ながら本作収録以外の同トラック使用曲等でもリリック的にこの趣旨からハズしているチューンは収められていない。
ともあれ、"Kette" "Bleaking Up" "Freedom Blues" "Fade Away" "Fighting To The Top" 等々、90年代以降のリメイク・トラックの傑作が使用されたバックのサウンドも悪いはずは無い訳で、何曲かは今後もクラシックと成り得るクオリティ。トップ・プロデューサー、ボビー″デジタル″ディクソンの素晴らしい仕事を振り返るにはうってつけの作品集だろう。
そして、このアルバムで彼のサウンドにハマってしまい、本作以前、つまり80年代末から長きに渡ってダンスホール・レゲエのシーンの先頭に立ってきた当レーベルの全貌を知りたい向きには、オーバーヒートから出ている『Best Of Digital-B』シリーズ(計11タイトルに加え、80年代の作品を集めた番外編『Back In The Days』、マイティ・クラウンのミックスによる『Mighty Crown Meets Digital-B』も有り)がうってつけだ。
前述の『The Best Of...』収録の曲もちりばめられているが、ルーツ系有り、Studio One等のロック・ステディ・リメイク有りと、彼の幅広いサウンド構築術が味わえる。10年近くに渡ってリアルタイムでこのレーベルをとらえ続けてきたからこその良曲がどのアルバムにもフルに収められているので、できれば全タイトルを揃えてその素晴らしい解説書と共に90年代のダンスホール・レゲエを楽しんで欲しい。