King Tubby
Dub No Dead
Text by Noboru Yamana
先月号で予告した通り、今月からスタートした新コーナー「DUB NO DEAD」。リディムならではの視点で毎回ディープに "DUB" を斬っていく予定。記念すべき第1回目はやはりこの人、DUBの創始者、キング・タビーから。
オズボーン・ラドックは1941年1月28日、キングストン生まれ。ポップ・スターで言うならば、レノンとマッカートニーのちょうど間の生まれ年、存命であれば60歳、そんな世代である。彼がただのラジオの修理屋で一生を終えた、あるいはせいぜいサウンド・システムのPA屋であったままなら、周囲の人々がたまに「仕事中に王冠被ってた馬鹿な電気屋の親父がいたよなあ」と思い出す程度の存在だったに違いない。
ところが運命の悪戯。例えば百年後、22世紀を迎える頃に、全ては「あそこ」、もしくは「彼」から始まったと、音楽辞典の最初のページに、いかにもチャチでキッチュな、板金を切って丸めハンダ付けしただけのような、その王冠姿の彼の写真が載っていても、つまりビートルズにひけを取らないスペースで扱われることになったとしても、別に不思議はない。何故なら、キング・タビーと名乗った彼が、ダブを発明したからだ。
電気技師だったタビーは、1968年には自分のシステム、タビーズ・ホーム・タウン・ハイファイを稼働させ、自作のリヴァーブの効果を試したりしていたが、同時にプロデューサー~レーベル名でもあったデューク・リードのために、レコード盤のカッティングの仕事もやっていた。この時に彼は偶然ダブを発明する。つまりヴォーカルをほとんど消して、ベースだけにしたりドラムだけにしたり、楽器を抜き差しして、さらにエコーなどの処理を加える。簡単に言ってしまえば100%DJユースのラップ用空オケである。ロック・ステディ時代だから、すなわちスカのダブは存在しない。
このダブは、シングル盤のB面ではヴァージョンと呼ばれ、サウンド・システムでは、その場所だけのスペシャルと呼ばれて定着していく。このテクニックがもてはやされて、タビーは71年までにバニー・リー、リー・ペリー、グレン・ブラウン、オーガスタス・パブロなどの制作者からエンジニアとして起用され、それは70年代を通じてコンスタントに、否、かなり過密なスケジュールで続くのだ。彼がキング・タビーズ・スタジオを作ってからも、あれだけ排他的ムードの強い業界にありながら、他のスタジオからすらもマスターが持ち込まれて、タビーによるダブ・ミックスが相当な数作られたほどだった。そのスタジオ専属のグループ、アグロヴェイターズが70年代半ば過ぎ、ダブがアシッドでヘッド・ミュージック的な色彩を濃くし、独り歩きを始める頃、つまりダブ・アルバムが量産される時代に、チャンネル・ワンのレヴォルーショナリーズと双璧であったことも、記しておかなければならない。
アナログは2枚組だった(1)は、89年にまとめられた追悼盤。1枚目にナイニー、2枚目にバニー・リーの為のミックスを収録。(2)も89年に出たが、録音は75~76年。これもバニー・リーの下で吹き込んだジョニー・クラークのダブ盤。バックはアグロ。
(1)(2)共にスティーヴ・バロウ監修~イントロのデザインだった。
(3)は数年前のベイスメントによる再発で、これまたバニー・リー音源のダブ化、トミー・マクック入りのアグロ。リーの制作/タビーのダブという組み合わせが、評価も人気も高く、僕もそれに倣いたい。『キング・タビー・ミーツ~』のシリーズは何枚かあるが、『~ロッカーズ・アップタウン』は、いずれオーガスタス・パブロを取り上げる時に載せられるであろう。
(4)は軟派なイメージのあるハリー・ムーディー音源のダブ。コピーライトは76年で時代的にコアな仕上げになっているのが興味深い。
(5)は近年のブラッド&ファイヤーのリイシュー・シリーズ。ちゃんと解説付けろよな。実はリー音源で、悪いハズはないが、個人的には食傷気味。レゲエの黄金期ではあっても全ての再発に付き合いきれるわけではない。
この連載は相当な回数続く予定だそう。タビーはもちろん「打ち込み」の時代にも対応していくのだが、筆者の守備範囲外で、本稿の趣旨からも外れる。彼の「弟子」、プリンス・ジャミー(後のキング・ジャミー)の大活躍に比べると、成果もさほど、と書かざるを得まい。彼の写真は概ね老けて見えるが、89年2月6日、賊に殺されてしまったということは、48歳になったばかりだったのである。
(1)『King Tubby's Special 1973-1976』
[Trojan]
(2)『Jonny In The Echo Chamber』
[Attack]
(3)『King Tubby Meets
The Agrovators At Dub Station』
[Attack]
(4)『Harry Mudie Meet
King Tubby's In Dub Conference』
[Moodisc]
(5)『Dub Like Dirt』
[Blood And Fire]